「決して金持ちには勝負を挑むな」今、資金100万円のあなたが、資金100億円の機関投資家(あるいは大金持ち)と一勝負1万円の丁半ばくちをすることを考えよう。この場合、あなたが相手より100回多く負けた時点で、あなたは資金を失い破産することになる。これはランダムウォークの法則にたとえることができるという。ランダムウォークとは金融商品の場合によく使われ、金融商品の値動きには規則性が無く、過去の変動とは一切関係ないとする仮説。今後の値動きを予測するうえで過去の値動きは参考にならず、過去の値動きの変動をパターン化することで投資判断材料にするテクニカル分析の有効性を否定している。現時点での株式市場には利用可能なすべての新たな情報が直ちに織り込まれており、株価の予測は不可能であるという学説の効率的市場仮説と密接に関連する。物理的には実際にブラウン運動などで観察される。
先程の例の場合、ランダムウォークの法則が教えるのは、あなたの破産確率は金持ちの破産確率の1万倍である、ということである。つまり、1万回勝負してやっと1回勝てるかどううか、そのくらいあなたは不利なのである。これじゃあ、人生何回あっても勝てるわけがない。この教訓は冷徹なものである。1回1回の勝負自体は公平で5分5分のものであるとしても、「資金がなくなるまで」というルールで勝負したら、貧乏人は金持ちにはほとんど勝てないのである。短期の株式投資(買ってすぐ売る、という手法で、投機と呼ばれるやつ)というのは、半丁ばくちみたいなものだといっていい。いくら借金が可能だからといっても、個人の信用には限界がある。無限に借金ができるなら、どんな相手との半丁ばくちも公平な賭けだといえるが、資金に制限がある限り公平ではありえず、貧乏人は決して金持ちにはかなわないのである。これは数学法則から導かれる人生哲学なのだからしょうがない。(使える!確率的思考 小島寛之著より)
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